Japan Vision Vol.2|地域の未来を支える人福島県大沼郡会津美里町
会津本郷焼宗像窯
宗像 利浩さん 宗像 利訓さん

更新日:2016年4月8日

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福島県の伝統工芸“会津本郷焼”を継承されている匠:宗像窯 八代目当主の宗像 利浩(むなかた としひろ)さん、そして九代目となる長男の宗像 利訓(むなかた としのり)さんのメッセージをご紹介いたします。
地元会津美里町生まれの利浩さんは、宗像窯の八代目として生まれ、今年で作陶40年を迎え、11月には日本橋高島屋で個展を予定されており、ご子息の利訓さんは5月にホテルニューオータニの寛土里で個展を予定されております。長いご経験の中で伝統を変えることなく「伝承」してきたもの、そして時代の流れやニーズの多様化と共に変化(進化)させ「継承」してきたもの、二つの「承」があり、利浩さんが次の世代の利訓さん、そして未来に残していきたいものは、会津本郷焼の「伝承」と「継承」の両方を大切にする姿勢であると言います。お話を聞かせていただく中で、お二人は師弟関係というよりも、お互いをプロとして尊重し、刺激を与え合う存在として接していらっしゃる姿がとても印象的でした。400年の伝統を継承する匠としてのこだわり、そして未来への展望をぜひご一読ください。

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風土の中で作る。

焼き物は大きく「陶器」と「磁器」の二つに分かれ、陶器の原料には粘りのある土、磁器には白い石が必要になります。昔から会津本郷地方にはこの二種類の原料が豊富であったため、産地として栄えてきました。宗像窯の先祖である宗像出雲守式部は奈良時代に宗像大社の布教師として会津本郷に移り住み、その後神官を辞して陶業に専念し代々、会津の豊かな土と水、そしてこの風土の中で作る「作陶」にこだわり続けています。私たちが作陶を続けていく中で常に意識していることは、まずこういうものを造りたいという想いを持つ事です。そうすればおのずとそれを作る為の技術と感性を磨かなければなりません。それが焼きものが1焼2土3細工といわれる由縁です。

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人との御縁こそが大切。

また、宗像窯が八代にも亘り、継続することが出来ている背景には、先祖が人との御縁を大切にした事によって、厳しい環境の中にあっても多くの人に支えられ、どうにか乗り越える事が出来たからだと思います。又、作品を通して対話をしていく中で見た目だけでは終わらない五感の世界への気づきは大きな財産です。五感にうったえる作品を造るためには目標を高く持ち、実現の為に挑戦を続ける事に陶芸家としての成長があるのではないでしょうか。
とはいえ、人間であれば誰しも慢心してしまったり、目標を見失ってしまうことはあると思います。長く経験を積んで行く中で、「新しい挑戦をしなくても継続できる。それなりの作品を作っていれば、大丈夫。」と考えてしまう時期が、正直なところ私にもありましたが、2011年3月に起きた東日本大震災が、そんな気持ちを一変しました。代々継承してきた町指定文化財の「登り窯」が破壊され、また他の地域、特に海外のお客さまからの風評被害は甚大なものであり、2010年にパリで個展を開催し、海外からもオファーがありこれからという時にすべてがなくなりました。その状況を打破するために私たちが出来ることは、再び良い作品を生み出し続けることしかありませんでした。震災で甚大な被害を受けたはずの「福島」という土地から、こんなにも素晴らしい作品が生み出せるという評価を得るために、個展や取材を通してメッセージを積極的に発信しました。震災という大きな逆境がなければ、そこまではやらなかったかも知れません。そのことが功を奏してか、風評は徐々に消えていき、また大変ありがたいことに、周囲の方々のご協力で「宗像窯登り窯再生プロジェクト」(代表:大塚孝義氏)まで立ち上がり、無事復旧させることができました。

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感謝の気持ちを忘れず、未来に継承していきます。

もともと“定年”というものが無い、陶芸家という道を選んだわけですから、生涯現役を続けられるように、また利訓をはじめ、次世代の人達と刺激を与え合える存在でいられるように、体調の管理もしっかり行うことを意識しています。想像したものをつくるには確かな技術と経験が必要であり、そして良い作品は、より明確な想いを以て、理想を追求する姿勢からしか生まれません。苦難の時こそ新しいものに挑戦できるチャンスととらえ、これからも先代達に対する感謝の気持ちを忘れず、福島の未来、そして日本の未来に継承していきたいと思います。

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