Japan Vision Vol.6|地域の未来を支える人青森県弘前市
ブナコ株式会社
倉田 昌直さん

更新日:2016年5月6日

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青森県弘前市の伝統工芸(木工品)“BUNACO”を開発・継承されているブナコ株式会社 二代目代表取締役:倉田 昌直(くらた まさなお) さんのメッセージをご紹介いたします。
青森県と秋田県にまたがる「白神山地(しらかみさんち)」が、人為的な影響をほとんど受けていないブナの原生林として、世界自然遺産に登録されている事を知っている方は多いと思います。その豊富なブナの木ですが、実は昔から「森のダム」と呼ばれるほど木中に含まれる水分量が多く、建材としての使用は出来ませでした。そのため薪や炭、林檎箱などといった形でしか利用価値がなかったそうです。“BUNACO”が開発した特殊技術は、そのブナの利用価値を飛躍的に向上させ、ブナを原料とした木工品の可能性を広げただけでなく、自由度の高いデザインと曲線美を可能にするものでした。今では世界的に高い評価を受けるブランドに成長しています。その成長の背景には、さまざまな挫折と挑戦の歴史がありました。そんな匠からのメッセージ、ぜひご覧ください。

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故郷青森県のブナを有効活用するために。

BUNACOが開発した特殊技術は、日本一の蓄積量を誇る私たちの故郷青森県のブナを有効活用するためのものでした。ブナは「橅」と書かれるほど、木とは呼べない程に水分量が多く、通常の乾燥技術では木工品としての使用ができません。そこでまず、ブナの木を薄く桂剥きにし、それをさらにテープ状にカットすることで乾燥させ、テープ状に巻き上げたブナを、少しずつずらしながら成形していく手法で加工しています。この手法のメリットは、通常ではできないさまざまな曲線が出せるため、デザイン面での自由度が高いこと、また機能面の確保もしやすいことです。出来上がった製品のメリットはしっかり乾燥しており、海外まで運んでも形状が変わらない強度をだせることにあります。
ただし、そのメリットの反面、機械化は難しく製作はすべて「ハンドメイド」で行なっています。その理由は大きく二つ。一つ目は同じ場所に生えているブナの木でも、一本一本色味も違えば、水分量や柔軟性などが異なるため、それぞれの木の個性を職人の目でしっかり見極めて、作業に入る必要があること。二つ目は、デザイン面での自由度が高い分、お客さまのオーダーも多岐にわたり、基本「多品種×少量生産」になることです。素材の個性を見極めることと製品の個性を出すことに重きを置いているため、機械化が「出来ない」のです。その中で効率性を追求するために、全ての工程を一人の職人で仕上げるのではなく、分業で進めています。

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BUNACOを守るための変化。

もともと“BUNACO”は、テーブル周りの比較的小さな木工品から始まりましたが、90年代の終わりごろから照明器具やスピーカーなど、大きな製品へとシフトしてきました。そのきっかけは“会社が倒産”しそうになったからです。
バブルが崩壊してからもしばらくの間は売上げが伸び続けていましたが、98年頃から売上が前年割れするようになりました。その理由は明確で、景気が後退しているのに、新しい商品の開発や展開をしなかったからです。最も影響が大きかったのはギフト需要が減ったこと。販売の主力だった百貨店でどんどん売り上げが落ちていき、何とかしなければ・・・と。その時、以前に東京の知り合いから頼まれ「照明」をつくったことを思い出し、「これまでやってこなかった家電製品という領域で、BUNACOの技術を活かす!」これはいけるかも!?と思い、そこに賭けることにしました。始めてしばらくは成果につながりませんでしたが、多くのデザインコンペなどでの受賞がきっかけとなり、高級宿泊施設や商業施設、レストランなどを中心に採用されるようになりました。その後、ヨーロッパ諸国(主に北欧)でも評価され、海外からの発注も増えて業績は持ち直しました。また、現在は主力商品の一つになっているスピーカーも、オーディオ好きの弘前大学の教授がいきなり図面を持ってきて、「BUNACOでこの形のスピーカーをつくって欲しい!」と頼まれたことがきっかけで生まれた製品です。
人から「社長はアイディアマン」とよく言われますが、実際には照明もスピーカーも他のアメニティも、全て人から言われて気付いたことです(笑)。むしろアイディアマンではないからこそ、色々なモノを見たり、人の意見を聞いたりしてカタチにすることができたのだと思います。中小企業では社長の意地や思い込みで事業を進めたことによる失敗が、とてつもなく大きなダメージになることがあります。私も過去の失敗から肌で感じることができたため、経営者として、それまで以上に「聞く姿勢」を大事にするようになりました。それが、最も頼りになる情報源ですし、若い社員たちとのコミュニケーションにもなります。その姿勢を持てなかったら、今の会社の姿はなかったと思います。現在、ブナコの社員は地元の若いメンバーが中心です。そして「つくり手」になりたいと思う若い人たちは年々増えているように感じます。若い皆さまには、どうか遠慮せず、画一化せずに、仕事でもプライベートでも自分の個性を発揮していって欲しいと思います。

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「メイドイン青森」にこだわり、
若者たちと共に育てていきます。

BUNACOはこれからも故郷である青森でモノづくりを続けていきます。現在、ブナの原生林を目の前に臨む「西目屋村」にある、廃校になった小学校をリノベーションして、工場にする計画を進めており、来年春には稼働する予定です。自然に恵まれた良い環境で働くこともでき、その土地の人たちから愛されてきた建物を守ることもできます。BUNACOをご購入いただけるお客さま、ご興味をお持ちいただいている方はぜひ青森に来ていただいて、その風土と、私たちのモノづくりの雰囲気を感じていただければと思います。これからも「メイドイン青森」にこだわり、世界から愛され、求められるブランドになるように、若いメンバーと共にBUNACOを育てていきます!

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