更新日:2017年06月09日

Japan Vision Vol.64|地域の未来を支える人 東京都港区
株式会社和える 代表取締役
矢島 里佳さん

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地域の未来を応援する「Japan Vision」。第64回目となる今日は、「株式会社和える」の代表取締役:矢島里佳(やじま りか)さんのメッセージをご紹介します。
「和える」では、日本の伝統産業の技術を活かしたオリジナル商品を生み出す“0から6歳の伝統ブランドaeru”をはじめ、地域の伝統や文化を感じられる、ホテルの一室をプロデュースする『aeru room』事業、また、伝統産業を引き継ぐ職人さんとのつながりを活かして、お客さま向けのお誂え(オーダーメイド)商品を作る『aeru oatsurae』事業など、2011年3月の創業以来「日本の伝統を次世代につなぐ」さまざまな事業を展開しています。

矢島さんが「和える」を創業したのは大学四年生の時。東京都で生まれ、幼少期を千葉県で過ごした矢島さんは、幼い頃から、直接触れる機会が少なかった日本の伝統に強い関心を持っていました。中学・高校では茶華道部に所属し、高校三年生の時には「TVチャンピオン2 なでしこ礼儀作法王選手権」で優勝。日本の伝統と職人の魅力にさらに惹かれ、19歳の時には日本の伝統の魅力を発信する仕事を始めて、全国を旅しました。そんな学生時代を過ごす中、日本の伝統を「次世代につなぎたい」という想いが強くなり、「和える」の構想に至ります。コンセプトは『先人の智慧を私たちの暮らしの中で活かし、次世代につなぐこと』。

想い描いてきた構想を、揺るぎない意志と行動力を以て、全国の職人さん達とともに一つひとつカタチにしていく、矢島さんの熱いメッセージを、皆さまもぜひご覧ください。

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日本の魅力をもっと深く知りたい。

自分が生まれた国「日本」が好き。でも一番の魅力ってなんだろう。
私がそうだったように、私たちの世代はそういった考えの方が多いと感じます。自分の国でも海外でも、一つの国のことを深く知るためには、その国の歴史や思想、文化・伝統を深く知る必要があると思いますが、今はどんな情報も「便利」で「速く」手に入れることができるため、表層的な知識や、人・文化との関わり方が増えてしまっているように感じます。
子どもの頃から潜在的に「好き」と感じていた日本の魅力をもっと深く知りたいと思い、中学生から「茶道と華道」を始めました。それから高校卒業までの間、茶道・華道を通して日本の伝統や文化に触れるうちに、私にとっての「日本の魅力」が顕在化された気がしました。それは、日本人の思想、日本の歴史・生活様式と深い関係がある「伝統産業」の魅力です。

大学ではジャーナリスト輩出率の高い学部・学科を選考し、学生生活中に「全国各地の職人さん達から、直接お話を聞かせていただく」、という目標を立てましたが、日本全国を旅するお金は十分にありませんでした。また、職人さんからすれば、女子大生が一人で話を聞きに来ても、それは単に大切な仕事の時間を奪われてしまうだけなのではないか、ということに気付き、職人さんにとっても時間を割く意味のある訪問にしようと、その方法を探しました。
フリーライターとして、「日本の伝統産業や職人さんを紹介する」という企画を作り、知り合いの方のご紹介で、JTBさまがその企画を採用してくださり、会報誌のお仕事をいただくことができました。憧れだった「ジャーナリスト」として、全国の職人さん達を訪問する計画が実現したのです。いち女子大生の企画を採用してくださったJTBさま、そしてお話を聞かせてくださった職人さんたち心から感謝しています。

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起業を決意。

取材では、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただくことができ、また職人さん達の素晴らしい技術と、質の高い作品に触れられる最高の機会となりました。ただその側面で、伝統産業・伝統工芸品の需要は年々減少し、後継者問題などもあり、徐々に衰退している現状も知りました。
これだけ魅力的な伝統産業が、どうして衰退していくのかと、純粋に疑問に感じましたが、この疑問こそが、伝統産業の魅力を「伝えたい」から、次世代に「つなぎたい」という想いに変わるきっかけになりました。その頃から「日本の伝統を次世代につなぐ」ために何が必要なのか考え始め、それが「和える」の事業の骨格になっています。周囲が就職活動を始める中、私は「起業」という道を選び、「日本の伝統を次世代につなぐ」ことを、一生の仕事にしようと思いました。

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社名の『和える』は、ごま和えの『和え』です。

「和える」は、異なる素材同士がお互いの形を残し、お互いの魅力を引き出し合いながら一つになることで、より魅力的で新しいものが生まれる、ということを指しています。これまで私たちが出会ってきた職人さんは20代~40代の子育て世代の方が中心で、継承されている伝統を自分達がつなげていくという強い想いをお持ちの方たちです。また、昔ながらのやり方を頑なに守るだけでは、今後の継続は難しいというお考えがあり、「日本の伝統や先人の智慧と、現代を生きる私たちの感性を和えて新しいものを生み出したい」という私たちの想いに賛同してくださいました。

“0から6歳の伝統ブランドaeru”は、まさに双方のこうした想いから生まれたものです。自分で食べるを応援する『こぼしにくいシリーズ』や、日本の所作が自然に身につく『はじめてシリーズ』を始めとする、aeruの商品は「子どもたちに日本の伝統をつなげたい」という想いをカタチにしています。

「aeru」のデザインを考える際には、敢えて「マーケティング」の考え方を持ち込まず、赤ちゃんや子どもの本能的な欲求に応えるものを、職人さんたちの技術でどう実現するかを、いっしょに考えました。「マーケティング」を意識しすぎると、どうしても「大人の事情」による商品ができ上がってしまうからです。
「子どもが使う器なのに、どうして落としたら割れてしまう素材を使うの?」と、ご質問をいただくことがありますが、それは「経験」を大切にしたいからです。器が割れないことよりも、小さい時から「こうしたら器は割れてしまう」という経験があることで、扱いを覚えることができます。和えるでは、割れたり、欠けてしまった器は、「お直し」を行っておりますので、直しながら長くお使いいただけます。直した「跡」が、幼少期の良い思い出にもなると思います。

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『和える』の展開・今後の展望について。

和えるでは、“0から6歳の伝統ブランドaeru”以外にも、「日本の伝統を次世代につなぐ」ための事業を複数展開しています。2014年に開始した『aeru re-branding』 では、クライアント企業さまの創業時の原点に立ち返り、企業さまが持つ伝統や資産を紐解いていくことで、企業価値を次世代につなぐ方法を策定するお手伝いをしています。
2016年に立ち上げた『aeru room』は、全国各地の宿泊施設の一室を、地域の伝統や文化を感じられる空間にプロデュースする事業です。ホテルや旅館のお部屋を、その地域の伝統や文化を感じられるお部屋に変えていくことで、空間を通して地域の伝統を次世代につなぎます。
おなじく2016年に開始した『aeru oatsurae』は、伝統産業を引き継ぐ職人さんとのつながりを活かして、お客さま向けのお誂え(オーダーメイド)商品を作るサービスで、個人のお客様の鞄やお財布など身につけるものや、企業さまの記念品やノベルティグッズなどの開発にご活用いただくことができます。

他にも、今後展開を予定している事業は複数ありますが、そのすべての柱は「日本の伝統を次世代につなぐ」ということです。規模の大きさや利益が先にあるのではなくて、多くの方が、さまざまなきっかけで「日本の伝統」に触れられる「入り口を増やすこと」を目的としています。
2011年の3月に創業した「和える」は現在6歳、2031年に20歳を迎えて、「大人」になります。20歳になった時、法人としてしっかりとした人格(法人格)を持ち、独り立ちできる会社であるように、たくさんの愛情を注いで、育てているところです。和えるの社員は、和えるくんのお兄さんお姉さんとして、自ら考え、和えるくんを共に育んでいます。

戦後の「豊か」な時代に生まれて、モノに困ったことがほとんどない私たち世代は、大量生産・大量消費の恩恵の陰で失いかけてしまっている日本の伝統を、いままさに取り戻す役割を担っていると思います。

“三方良し”を大切に、これからもたくさんの職人さん、そしてみなさんと共に「共創」し、日本の伝統を次世代につないでいきたいと思います。

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