Japan Vision Vol.104|次世代の匠
福島県大沼郡会津美里町
宗像窯 九代目
宗像 利訓さん
これまで「Japan Vision」では全国各地から、地域の未来を支えるさまざまな業界の“匠”をご紹介してきました。今後『次世代の匠』と題して、これまでご登場いただいた匠の「次世代」を担い、活躍されている皆さまもご紹介していきたいと思います。第1回目は福島県大沼郡会津美里町から、会津本郷焼宗像窯八代目:宗像 利浩さんのご長男:宗像 利訓(むなかた としのり)さんのメッセージです。
宗像窯の創業は、1718年(享保4年)。古くから陶器の原料に適した粘りのある土、そして磁器に適した白い石の両方が豊富にとれる会津本郷焼(あいづほんごうやき)の産地で、300年にわたり陶業に専念してきました。利訓さんがこの道に入ったのは、今から13年前。初代から変えることなく「伝承」してきた伝統と、時代の流れやニーズの多様化と共に変化(進化)させ「継承」してきたもの、二つの「承」を父:利浩さんから受け継ぎ、そして未来に残すために、日々、会津の土と向き合っています。由緒ある「宗像窯」の次世代を担う若き匠のメッセージを、皆さまもぜひご一読ください。
作陶と向き合うほどに感じる奥深さ。
2年前に取材していただいた時と変わらず、父:宗像利浩に師事し、日々作陶に励んでいます。宗像窯に代々受け継がれてきた「会津本郷焼」の伝統技術を学びながら、新しい造形や、釉薬(ゆうやく)の研究を重ねて、自分ならではの色合い・風合いを確立させるための作陶を続けています。
今年2月にも、東京のホテル・ニューオータニの現代陶芸寛土里(かんどり)にて、個展を開催させていただきました。ご紹介の写真はその際に発表しました新作の一つ、「白緑釉鶴首(びゃくろくゆうつるくび)」です。会期中は、本当にたくさんの方にお越しいただき、ご好評をいただきました。
この道に入って13年が経ちましたが、作陶と向き合うほどに陶芸の奥の深さを実感していますし、父の作陶に対する姿勢や、熟練した技術から生まれる作品にいつも刺激を受けています。また、陶芸家として、とても学ぶことが多いです。父からの「代替わり」についての具体的なタイミングは決まっていませんが、普段から意識して仕事をしています。60歳を超えた今でも、精力的に素晴らしい作品を作り続けている父に感謝しながら、僕自身、ますます貪欲に経験を積んで、成長するタイミングと捉えています。
伝統技術をベースに、新しいアプローチをする。
現在、日本人の生活様式もどんどん変わってきていますし、日本の伝統工芸に興味を持ってくださる海外のお客さまも増えています。代々受け継がれてきた伝統の技術をベースに、時代の変化に対応したアプローチをしていくことが、次世代を担う上でとても重要だと考えています。また、AIなどテクノロジーが進んだ現代において、人の手から生み出される温かみのある作品づくりの大切さも感じています。
これからの生活様式に合う、造形や色合いを確立するために、積極的に新しいことにも挑戦をしていきたいです。また、2020年には、関西では初となる大阪での個展を予定しています。国内・海外を問わず、今後も発表の機会を増やして、より多くの方に日本の伝統工芸に興味を持っていただける。そんな活動を続けていきたいと思います。
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