Japan Vision Vol.14|地域の未来を支える人福岡県筑後市
宮田織物株式会社
宮田 智さん 吉開 ひとみさん

更新日:2016年6月20日

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福岡県筑後市に伝わる伝統工芸“ 久留米絣(くるめがすり)” を継承し、オリジナルの織物、和木綿(わもめん)へと発展されている宮田織物株式会社 代表取締役会長:宮田 智(みやた さとる)さん、代表取締役社長:吉開 ひとみ(よしがい ひとみ)さんのメッセージをご紹介いたします。

大正二年に久留米絣の里:筑後市で産声をあげた宮田織物さんは、平成25 年4 月で創業100 年を迎えました。創業以来、糸選びから、織り・縫製まで、一貫した自社生産にこだわり、元は庶民の普段着として重宝されてきた久留米絣の良さを活かしながら、独自素材、独自デザインを産み 出すことで、その用途を拡大、多くのファンを獲得してきました。四代目社長として組織を率いる吉開ひとみさんは、「女性が元気な会社、女性が働きやすい会社」創りにも注力し、福岡市から表彰も受けています。伝統に学びつつ、そこから新たな知識・技術を導く温故知新の姿勢、そして見えない所にも決して手を抜かない信念と、「一隅を照らす」の理念を大切にする匠のメッセージ。ぜひご一読ください。

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<宮田 智さんのメッセージ>
久留米絣は、天明八年(1788 年)筑後国久留米通外町(現久留米市)に誕生した井上伝さんにより創始され、国の重要無形文化財にも指定されている伝統的な織物です。その製作工程は30 以上にもおよび、藍色の美しさ、織りの意匠の巧みさ、そして着るほどに増す着心地の良さと風合いで、200 年以上にわたり、多くの人に愛されてきました。久留米絣の里である福岡県筑後市は、久留米絣の機元(はたもと)が数多くあることでも有名です。戦時中、軍事統制で製造ができない時期もありましたが、終戦後に「平和産業」として認められ、久留米絣は今日まで脈々と続いています。宮田織物も久留米絣の機元として、大正二年、私の祖母である宮田サカヱが創業いたしました。昭和40年より、「綿入れ袢天(はんてん)」製造へと移り、多くのお客さまに支持されて、業績・規模を拡大。最盛期には生産数日本一を誇り、昭和59 年にこの地に新工場も建設しました。

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試行錯誤を重ね辿り着いたのが、
「原点回帰と温故知新」。

しかし、その状況も「バブルの崩壊」により一転します。それまで売れていた商品が売れなくなり、主力であった綿入れ袢天の需要も月を追うごとに減少していきました。バブルとは関係なく、住宅環境も木造建築から変化したことや、若い世代の間では、袢天に対して古いイメージを持たれつつあったことも大きく影響していたでしょう。また、その頃から人件費の安い中国をはじめとするアジア諸国でモノ作りをする企業が増え、安売り商品が大量に出回る時代に突入します。我々は袢天の代わりに何を売るべきなのか?大量生産・安売り商品にどう対抗していくべきなのか?
毎年2 割以上も売上が減少していく中で試行錯誤を繰り返しました。そんな中、出した結論が「原点回帰と温故知新」です。宮田織物の原点である久留米絣の良いところを活かしたオリジナルの織物「和木綿(わもめん)」がベースの商品戦略を打ち出しました。久留米絣はもともと、庶民の普段着として重宝されていましたが、製造工程が多岐にわたりコストも掛かります。久留米絣の良さを活かしつつ、お客さまのニーズに合わせる展開が必要だったのです。久留米絣の流れを汲む「和木綿」は、1 本の糸から選び抜き、試し織りを重ねて、織り上げた織物で、久留米絣の心地よさはそのままに、広幅の織物として、さまざまな柄行、さまざまな色合いに対応することが可能になり、和の婦人服ブランドとして展開。バブル崩壊後の屋台骨を支えてくれました。

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<吉開ひとみさんのメッセージ>
供給量の過剰による服離れ、可処分所得の減少による服飾費の縮小などの繊維業界の厳しい状況において、お客さまに支持していただくためには、オリジナル素材「和木綿」の良さを追求した、宮田織物しかできない品質と独創的なデザインを打ち出すことが、最も重要と考えています。“ 年齢を重ねるほどに似合う服” をコンセプトにした「彩藍(さいあい)」、“ あなたらしく伸びやかに”をコンセプトにした「らしか」や“ 大人の女性のためのリラックスウェア”「ことん」、また、絣で作ったストールや小物は、そんな想いを形にしたブランドです。宮田織物のお客さまは、60 代~ 70代の女性が中心でしたが、こういったブランドを支持してくださる若い世代のお客さまもどんどん増えています。
商品企画には、若い世代からベテランまで、さまざまなメンバーが関わり、着て下さるお客さまはどんな方か?着ていただくのはどんなシーンか?それを明確にイメージし、それに合うデザインと色彩を考え、糸選びから、生地織り、縫製までを行います。一枚一枚時間を掛けて手作業で行う「綿入れ袢天」と同様、全てのブランドを手作業・自社一貫生産にこだわっています。また、プロデュ―スを専門に行う会社さんとのコラボレーション商品が、新たなお客さまの獲得にも繋がり、今後も拡大して行く予定です。

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人の成長が、
会社の成長につながる。

女性のスキルが活きる、きめ細かい手作業が宮田織物の品質を支えています。現在75 名いる社員の7 割は女性です。「女性が元気な会社/女性が働きやすい会社」は伸びていく会社であることを信じ、出産後の職場復帰や、子育てしやすい職場環境・ムード創りに社員全員で取り組んでいます。福岡市から子育て応援企業として表彰を受けたこと、離職率が低いことも私たちのささやかな自慢です。合わせて、組織の若返りも進めていて、平均年齢はこの5 年で5 歳も下がりました。地元福岡だけでなく、熊本県、佐賀県からも若い方が興味を持ち、ものづくりの現場に入ってくれています。今後も、ものづくりが好きな方を増やし、育てていきたいです。

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「一隅を照らす」を胸に、
地域社会を照らしていきます。

「いつまでも永く愛していただける服」、「着てホッとする服」、「おしゃべりが始まる服」を私たちは創りたいと考えます。経営理念の「一隅を照らす」とは、自分達の置かれた場所で、与えられた役割を精一杯果たすこと。小さな光が、やがて大きな光になるように、宮田織物という小さな会社が、見えない所にも決して手を抜かないという信念のもと、手から手へ、ひと織りひと針愛情込めた誠実なものづくりをコツコツと続けることで、お客さまを、地域社会を照らしていきたいと考えております。

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