更新日:2018年07月02日

Japan Vision Vol.114|次世代の匠 京都市北区
日本刺繍 アトリエ森繍
佐藤未知さん

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京都市北区上賀茂中大路町から、アトリエ森繍(もりぬい) 代表:森 康次(もり やすつぐ)さんの後継者として活躍されている、佐藤 未知(さとう みち)さんのメッセージをご紹介します。
いつの時代にも人々を惹きつける着物の文様表現には、大きく分けて染と織、そして“刺繍”があります。師匠の森さん、そして佐藤さんが手掛ける「日本刺繍」は、1本1本の糸から優美な絵を丁寧に縫いあげていき、着物に新しい世界観や美しさを生み出す伝統の技術です。
この道57年の経験を持つ森康次さんに、佐藤未知さんが弟子入りしたのは今からおよそ12年前のこと。前回取材をさせていただいた1年半前から変わることなく、日本刺繍に惹かれ、日本刺繍を愛し、師匠である森 康次さんの技術と感性を、ひたむきに学ばれている姿勢がとても印象的でした。そんな『次世代の匠』のメッセージを、皆さまもぜひご一読ください。

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“発想の引き出し”を持つために。

前回取材いただいた時と変わらず、森先生に師事し、日本刺繍の技術・技法の習得に励んでいます。また、さまざまな風合いの着物に合わせて、刺繍のデザインを「発想する力」を付けるために、時間を見つけては外を歩き、スケッチする時間を持つようにしています。少しずつではありますが、「この部分の配色と技法をどうするか?考えてやってみて」といったように、先生からお任せいただける機会が増えてきました。
技術や技法の習得もさることながら、日本刺繍の勉強をすればするほど「発想の引き出し」を持つことの重要性に気付きます。スケッチすることを習慣にしているのはそのためです。嬉しいことに、この周辺(京都市上賀茂中)には、美しい自然がたくさんあるため、外を歩けば四季折々のお花や植物、昆虫たちと出会うことができます。スケッチをする際に注意していることは、まず自分が「綺麗!」と感じたものをスケッチの対象にすること、そして「なぜ、“綺麗”と感じたのか?」と、自分が想像したこと・感動した理由を深掘りして考えることです。その理由を突き詰めて、自分なりの解釈をもつことで初めて「発想の引き出し」が増えると感じています。

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一つの絵の中にある季節感とストーリーを大切に。

着物に描く刺繍を1枚の絵と捉えた時に、先生はいつも季節感やストーリーを意識しています。季節はいつか、時間は朝方か夕方か、その場面に登場する、お花や植物、昆虫などの中で、主役と脇役をどう存在させるのかなど、さまざまな引き出しの中から、その着物の色味や風合いに合ったシーンを描き、形にしています。
お客さまといっしょに、どんな作品にするかを決めていくプロセスも同じです。まず、お客さまのご要望をしっかりお聞きすること。それを自分なりに整理して、どんな技法を使って、どんな絵にしていくのか?季節感やストーリーをどう考えるのか?仕上がった姿はどんな形か?など、想像を膨らませて、一つひとつ具現化していきます。お客さまと先生といっしょに、このプロセスを経験出来ることはとても良い勉強になります。最終的には、お客さまの想像を超えられるような作品を目指して作りはじめ、出来上がった作品をご覧いただいた時のお客さまの喜んだ顔を見ることが何よりも嬉しい瞬間です。

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表現に制約や限界がないことが、日本刺繍の魅力

日本刺繍の世界に入って、今年で12年目になりましたが、技術や技法、発想する力、どれをとってもまだまだ学びたいことがたくさんありますので、ゴールを決めることはできません。勉強するほどに、常に新しい発見があって、新しい魅力に気づきます。先生が仰います通り、文様表現に制約や限界が無いところが、日本刺繍の魅力だと思います。
これまで学んだことを活かして、少しずつ私自身の発想とデザインで、作品を生み出すことに挑戦していきたいと思います。そして今後も日本刺繍の技術を学び、継承していくことで、着物業界活況の一助になれることが私の目標です。

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